「相続できる人」の『遺留分』への配慮が必須です
特に家族で会社経営などされている場合は、対策していないと問題がより複雑化します
相続で優先される「遺言書」でもコントロールできない権利『遺留分』とは?でお伝えしたように
しっかり対策しておかないと、死後に「遺留分侵害額請求」が起こって「相続できる人」たちが大きな争いをする結果になってしまう可能性もあるからです
「では、どうやって対策すればいいのか!?」ということについてお伝えしたいと思います
ただし、先に注意点として、お伝えする対策は絶対に大丈夫というものではありません
法律は不変ではないし、過去の判例を見ると『遺留分』を侵害することを目的とし過度にやり過ぎてしまった場合に、後から否定をされたケースも少なくありません
法律も大きく関係するため、しっかりと専門家の意見を聞きながら対策する必要があり、さらに絶対的な対策ではなくことを念頭に置いてご覧いただければと思います
Point01「遺言書」を作る「付言事項」を付ける
『遺留分』対策のはじめの一歩は「遺言書」を作ることで、最低限「遺言書」が必要であり、対策するうえで大前提となります
また、一番の対策は、事前に家族でよく話し合い理解を深めておき、その話し合いをもとに「遺言書」を作成することです
遺言がない場合には、『遺留分』ではなく「法定相続分の権利を各相続人」が持ち、相続人全員で話し合って合意して決めた分け方を書面にし(遺産分割協議書)、全員の署名+捺印+印鑑証明がそろって初めて手続きへ進めます
遺産分割協議がまとまらないと、相続手続は進まないどころか、税金を減らすことのできる国のルールが使えなくなったり、逆にペナルティを受ける羽目になったり、良いことはありません
おわかりいただけたと思いますが「遺言書」を作ることは『遺留分』対策の大前提なのです
「遺言書」には「付言事項(ふげんじこう)」というものをつけることが可能です
「遺言書」の本文ではなく「ただし書き」のような部分です
「遺言書」の本文では「財産の分け方」や「相続分の指定」などの重要なことを書きますが、「付言事項」には「家族が助け合っていくように」「お母さんを大事にするように」「兄弟仲良くするように」など「想い」について書き残すことができます
「付言事項」はあくまで「ただし書き」であり法的効力はありません
感情に訴えるだけなので残された「相続できる人」(法定相続人)たちがそれを守るかどうかはわかりません
ただ亡くなられた方の気持ちが伝われば、あえて「遺留分侵害額請求」をしようとは思わなくなる可能性もあります
※ちなみに『遺留分』にも時効があって
①遺留分の権利があることを知ってから1年間行使しなかった場合、または②相続が発生してから10年経過した場合には『遺留分』は時効により消滅します
Point02 「生命保険」の「死亡保険金」の活用
「付言事項」を書いても「遺留分侵害額請求」が起こるときには起こります
いざ金銭請求をされたときに「払えるお金がない」という状態だと「遺言」によって財産を受ける人(相続人、受遺者)が困まります
そこで事前に『遺留分』の支払いに必要な金額をシミレーションして遺産を残したい人の手元に資金を確保し、すみやかに「遺留分侵害額」を払えるように準備が必要です
たとえば「生命保険」に加入し、「遺留分侵害額請求」を受けそうな相続人を「死亡保険金受取人」に指定しておくと非常に有効です
死後手続きすれば速やかに保険金支給されるので、早期解決が図れます
『遺留分』の計算方法は亡くなった方が所有していた財産額を基準に計算しますが、当該財産に「生命保険」の死亡保険金は含まれません(※間違いやすいですが、相続税を計算する際は「みなし相続財産」として入ります。改めて、詳しく記事にします)
そのため、預貯金として持っていて「遺言」で渡す場合と「生命保険に変えて死亡保険金で渡す場合」とで、『遺留分』の額が変わります
「生命保険」の死亡保険金として渡した方が『遺留分』は少なくなります
これは判例で認められた合法的な『遺留分』対策です
ただし、何においてもそうですが、やりすぎた結果『遺留分』の対象に含めるとされた判例もあるため注意が必要ですにで、『遺留分』や「遺留分侵害額請求」「相続税の計算」や「生命保険」など詳しい専門家に相談の上、対策することをお勧めします
Point03 『遺留分』の放棄の手続き
『遺留分』の放棄という手続きがあります
相続が発生する前に「相続できる人」(推定相続人)が家庭裁判所に手続きし、将来の『遺留分』を放棄することができます
推定相続人同士で意志がそろって『遺留分』の放棄までできると、特に後継者さんはとても安心です
相続の発生前には「『遺留分』は請求しない」と言っていたものの、相続の発生後に、環境の変化や心変わりした場合には、口約束だけでは『遺留分』を請求することもできてしまいます
気がかりなことがあって「高齢者の『遺留分』」などで、特に「認知症」などで判断力のなくなった方が「相続できる人」である場合の問題であります
たとえば、配偶者自身は『遺留分』を請求する意思はなかったとしても、「成年後見人」が就いていたら、後見人は立場としては『遺留分』を請求せざるを得ません
なぜなら『遺留分』を請求しないことは、本人の財産を減らす行為で「成年後見人」の仕事をしていないことになるからです
父親の相続が発生したときには、配偶者も高齢になっていることが多く、「認知症」などで「成年後見制度」の利用が始まっている状況であったりする可能性も大いに考えられます
会社経営されているご家族の場合、ご高齢の配偶者が自社株の大半を持っていて大変苦労するケースも少なくありません
しかし、『遺留分』放棄の手続きをしていれば、後見人も『遺留分』の請求はできません
そして、申立てが認められるには、「『遺留分』を放棄すべき合理的な理由がある」「『遺留分』権利者に相当な対価が与えられている」などの要件が必要です
また、当然『遺留分』権利者が自ら『遺留分』を放棄する必要があり、被相続人が無理矢理『遺留分』を放棄させることは認められません
『遺留分』の放棄という手続きは、『遺留分』の対策としては非常に有効です
ただし、有効な分『遺留分』の放棄は、放棄できる詳しい条件や申立方法などそれなりにハードルの高い方法ではあります
Point04 「養子縁組」の活用
「養子縁組」をし、「相続できる人」(相続人)を増やすことで、一人当たりの『遺留分』を減らすことができます
相続税法上は「養子縁組」は1人まで(実子がいない場合には2人まで)という制限がありますが、民法上は人数に制限はありません
ただし「養子縁組」することによって「相続できる人」(相続人)が増えてしまうため、思わぬ争いが生じることもあります
そして、一度した養子縁組は簡単には解消ができません
また過去に『遺留分』を減らすことを目的とした「養子縁組」が無効とされた判例もあります
そのため、実行するまでに相当しっかりと検討し、税務法務はもちろんですが、家族間の関係性や会社経営をしている場合は、その後の経営に影響しないか?などシミュレーションするなどとても注意が必要です
Point05 民法の特例による「固定合意」「除外合意」
「経営承継円滑化法」にて定められた『遺留分』に関する民法の特例です
会社の事業承継を早期から計画的にスムーズに行えるよう、後継者である子どもに株式やその他の事業資産を集中させるときに障害がなくなるよう『遺留分』についても特別な規定が創設されました
先代の経営者が生前贈与などで後継者に自社株を所得させた場合、その自社株等の財産は、『遺留分』の計算に入ります
その評価は贈与された時ではなく、亡くなられた時で計算するため、後継者がすごく貢献して自社株等の財産が上昇した場合、その上昇分も「遺留分侵害額請求」の対象となってしまいます
そのため、後継者が先代の経営者からの贈与などにより所得した自社株式等について、先代の経営者の財産を「相続できる人」(推定相続人「遺留分権利者」)全員の合意を前提に、次の二つの特例が設けられています
①自社株式等の価格を遺留分算定基礎財産に算入しないこと(「除外合意」)
②自社株式等の価格について遺留分算定基礎財産に算入すべき価格をあらかじめ固定すること(「固定合意」)
※①と②を組み合わせることも可能
上記は会社向けの内容になっていますが、個人事業者においても事業用資産が遺産の大半を占めていることも多く、後継者が納税猶予制度により事業用資産を引き継ぐとほかの「相続できる人」(相続人)の『遺留分』を侵害することも考えられます。①の「除外合意」を活用し、遺留分に関するトラブルを未然に回避することもできます
要件が多岐にわたり、また生前に「相続できる人」(相続人)全員で合意が取れるなどハードルがあるのですが「事業承継税制」などを使うのであれば活用すべき一つの対策です
まとめ
以上、『遺留分』の対策についてみていきましたが、
あくまで法律的な対策対策が前面に出がちですが、最もできてると対策しやすく効果が出るが、対策していないと問題は起こらないどころかエスカレートしていくのが「家族の対策」「心の対策」がとても大事です
遺留分は『請求されない限り支払う必要がない』ものです
遺留分を減らす対策は合法的な解決策ですが、「相続できる人」たちの間に遺恨は残ります。
できれば「相続できる人」(相続)全員が納得し、『遺留分』請求というのがそもそも起こらない相続こそが「ミライふくろう(不苦労)(福来朗)」になる道であると思います
『遺留分』対策とポイント
Point01「遺言書」を作る「付言事項」を付ける
Point02「生命保険」の「死亡保険金」の活用
Point03『遺留分』の放棄の手続き
Point04「養子縁組」の活用
Point05民法の特例による「固定合意」「除外合意」
何においてもそうですが、やりすぎた結果『遺留分』の対象に含めるとされた判例もあるため注意が必要ですし、『遺留分』や「遺留分侵害額請求」「相続税の計算」や「生命保険」「養子縁組」「事業承継」など、多岐にわたりますが実行するまでに相当しっかりと検討し、税務・法務はもちろんですが、家族間の関係性や会社経営をしている場合は、その後の経営に影響しないか?などシミュレーションする、「相続できる人」(相続人)全員の合意や関係者間の調整をとるにはどういう手順でやるのがいいのか?など、とても注意が必要です
それぞれ各分野において詳しい専門家にご相談の上、対策することをお勧めします
以下のような方は、お問い合わせから当officeへ一度ご連絡いただければと思います
「気になる対策がある」
「相談したいことがある」
「聞いてほしいことがある」
けど分野が分かれるため、ご自身でやご家族だけでは
「どこにどの専門家に、どの順番で相談にけばよいか?」
「そもそもそんな知り合いがいない」
「家族同士で家族間の合意や調整なんてできない」
当、「相続office ミライふくろう」がお役に立てるとも思います
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