突然死の父に、借金2,500万円があった!

親がいくら資産を持っているか?把握されてるご家庭は実に少ないです
ましてや借金などはご本人も家族には話しにくいものです

親が亡くなって初めて相続後の手続き準備をしながら
貯金はどこの銀行に預けている?とか株やってたの?
不動産が住んでるところ以外にあったの?
など少しづつ把握しているときや、債権者(親がお金を借りていた先)から督促が届いたときに
親に多額の借金があることを知ることも少なくありません

マイナスの財産(負債)も相続財産!!

兵庫県で町工場を経営されていたXさん(71歳)は2018年10月に脳梗塞でなくなられました
「相続できる人」(以下相続人という)は、配偶者Yさん(66歳)、長男Aさん(44歳)長女Bさん(40歳)の3人長男のAさんは同居、長女Bさんは別のお住まいでした。

ご家族3人で話し合い、ご自宅の名義はY様が、預貯金は子供お二人で分けようということで何の問題もなく決めていたそうです。

しかし遺品など整理している最中に、Xさんに2,500万円の借金があることがわかりました
小規模ながら工場経営していたXさんが、事業継続のために借り入れをしていたようですが、配偶者Yさんは全く知らなかったそうです。

相続で税金を「払う人」と「払わない人」は誰か?でもお話しした通り、相続は「プラスの財産」も「マイナスの財産」も引き継ぐことになります 

今回、すべての相続財産でも2,500万円は払えないため、「相続放棄」をしたいのことでしたので、司法書士におつなぎするにあたり、ご家族みなさんの想いと現状の全体的なお話を聞かしていただきました。

相続があって数週間での発見と、長男Aさんが相続のことを調べて「相続放棄」の権利を知ってすぐに検討され、ご相談に来られたことは、非常に良い判断だとおもわれます

ただし、「相続放棄」をしてしまうと、借金(マイナスの財産)からは逃れれることはできますが、同時に預貯金も自宅も完全に失うことになります(参考「相続できる人」と「相続できない人」とは?

長男Aさんも長女Bさんも、お母さんが生きているうちは自宅は失いたくない、とのことでしたのでお聞きした内容をまとめて、「相続放棄」などに精通された司法書士とミーティングすることになりました

「相続放棄」で問題ないか??

司法書士先生との打合せでまとまった内容は
第1順位の相続人長男Aさん、長女Bさんは「相続放棄」の手続きをする
第2順位の相続人のXさんのご両親はなくなっているので、第3順位の相続人Xさんのご兄弟のCさん、Dさんにも相続放棄手続きをする
③一人残った相続人配偶者Yさんがすべて(「プラスの財産」「マイナスの財産」も)を相続する
負債に関しては、債権者と話し合い、返済可能額を少しずつ返す(長男Aさんもサポートしながら)

「相続放棄」で注意しておかなければならないことが、第1順位の2人が「相続放棄」をすると、本人たちはマイナスの財産(負債)を免れますが、第2、第3順位の親族にそのマイナス財産(負債)が回っていってしまいます

今回の場合は第2順位のXさんのご両親はすでに他界されていたため、Xさんのご兄弟Cさん、Dさんがご健在だったので、お二人へマイナス財産が回ってしまうことは避けられません

配偶者Yさんとしては、「親戚にまで迷惑かけたくない」し、「借金のことなど知られたくない」というお気持ちでしたが、それでは解決しないこともご理解されており、結果、借金の返済はしていかないといけないけど家賃と思えば、自宅に住み続けられることの意味はご本人やお子さんたちにはメリットは大きく、上記の方法を進めたいとのご意向でした

Xさんのご兄弟お二人にも状況など事情をご説明し、お二人ともに「相続放棄」手続きをしていただき、上記流れ通り配偶者Yさんがひとり相続をすることとなりました

また、先のことですが幸い配偶者Yさんは一人っ子でご両親も他界されているため、配偶者Yさんが亡くなられた時には長男Aさん、長女Bさんともに自宅は不要とのことで、この段階で「相続放棄」をすることで負債を相続することが無くなります。

「相談していてよかった、当面の返済が残るにしても母が元気に自宅で暮らせているのは、専門家のアドバイスがあったからです。ありがとうございました」とのうれしいお言葉をいただきました

まとめ

ご注意いただきたいのは、今回のご家族がうまくいったから、この方法がすべてのマイナスの相続財産があるお家に当てはまる、というわけではありません。

最初にご相談いただいたときに、やはりご家族の想いや、環境や背景などをしっかりお聞きしてまとめたうえで、専門家と情報共有しミーティングを行った結果で、10人いたら10人の、100人いたら100人の環境や背景があります。まったく同じはありません。

長男Aさんのように、ご自身で積極的に勉強されて「相続放棄」を知って、ご相談に来られたということもあり、本来、専門家へも当事務所にたどり着けないがために、思いもよらぬ人生を歩まれる方も少なくないと思います

相続って?そもそも私に関係あるの?でもお話ししたように、どなたかがなくなれば相続は発生します。
特に今回のように相続財産にマイナス財産(負債)が関連する場合、今顕在化していなくても可能性がある場合は、事前にどんなものが財産になるのか?どんな選択肢があるのか?相続人は誰なのか?など把握しておくことが大切になります

今回の記事で少しでも心配なこと、気になるようなことがあれば早めに、信頼のおける専門家の方へご相談されることをオススメします。もし周りにいらっしゃらなければ、気軽に当事務所「相続office ミライふくろう」にお問い合わせください。

この記事を書いた人

吉政和彦

吉政和彦

大学卒業後、商社及び外資系金融機関に勤務。
2019年、会社経営者らに「会社や個人にトコトンお金を残す専門家」として、財務・税務・相続等のコンサルティングを行うa-office YOSHIMASAを開設。現在、ニーズの高まりを受け、相続コンサルティングに力を入れている。「相続の通訳」という立ち位置で、相続に強い士業など専門家と連携。相続税、遺産相続、実家の空き家対策など、相続全般に関する悩みや不安の解消をサポートしている。