「養子縁組」で節税できる?!

「養子縁組」というフレーズ、古い時代のドラマや映画など家督争いや相続の場面で聞くことがありました。
最近では「相続税対策」として「養子縁組」をすることが少なくありません

相続税の基礎控除の計算上、法定相続人の数に加えられるのは「実施がいる場合1人まで、いない場合は2人まで」という制限はありますが、そこだけで考えると節税になります

以前、相続で税金(相続税)を「払う人」と「払わない人」は誰か?という記事で書いたように、法定相続人の数が増えると控除額が増えるので、課税対象が減り節税になるということです

また、節税以上に知っておかなければならないのが、民法上は養子の数には制限なく、すべての養子にも実施と平等に子供としての相続権を持ちます

「養子縁組」については「相続税」と「民法」の両面から考えることが大切です

子の嫁や夫を養子縁組したら…

ある資産家Aさんの一人息子が離婚をしました
息子の元嫁は結婚と同時にAさんの養子になっていました

たとえ離婚をしたとしても養子の縁は切れません
Aさんが資産家であることを元嫁は重々知っているわけです
夫とは離婚しても養子縁組は解消せず元嫁は弁護士をいれて法定相続分遺留分の主張をしてきました

さらに子供も養子に入っていたりすると、元嫁は自分と子供の分も同時に主張してきます
Aさんの息子は一人っ子だったので、子供を引き取った元嫁の取り分は実の子供より多くなってしまいます

相続税対策に養子を勧められた!!

相続税の対策で金融機関から孫の養子縁組を勧められたというお話をよく聞きます
直系の孫を養子にすると、その子は親を経由せずに祖父母の財産を養子という立場で相続することができます

もし孫子の親が祖父よりも先に亡くなってしまったら、代襲相続分(本来の相続人である親がなくなっている場合その子が相続するルール)+養子分(自分の分)の相続の権利を持つということになります
同じひとりの人間だけど相続を受ける権利は2人分というわけです

夫に先立たれた資産家のBさん、同居している一人息子Cさんと孫のDさんを養子にしました
養子縁組をしたとき孫Dさんはまだ10歳でした

そんな時、Bさんが急遽なくなり相続人は息子Cさんと孫Dさんのお二人です
一見、何ら問題ないように見えますが実はそうでもなく、面倒くさいことになってしまいました

未成年であるも孫Dさんの親権者は養子縁組にしたことにより祖母Bとなり
Bさんの死により孫Dさんは親権者がいなくなった状態になります

ここで知っておかなければいけないのは
実の親であるCさんの親権者という立場は自動的に復活しないということです

未成年は法律行為を行うことができないので、家庭裁判所委に「未成年後見人選任」の申し立てをし「未成年後見人」を選びます
実親がなることも多いのですが遺産分割の場面では、さらに注意しないといけないことがあります

実の親Cさんと孫Dさんは資産家Bさんの相続人同士であるということです
この場合、「利益相反(ある行為により、一方の利益になると同時に、他方への不利益になる行為のこと)関係」となるので、再度裁判所に「特別代理人」の選任を申し立てCさんとDさんとで「遺産分割協議」をすることになります

さらに問題があります
特別代理人を家庭裁判所に依頼する際、遺産分割協議書の案も提出します
家庭裁判所は未成年者の権利を守ることを前提で内容を確認するので、遺産分割は原則として法定相続分通り(今回だと1/2)を確保するということになります

ただ絶対に1/2出ないと認めないということではなく、合理的な理由があれば認められます(不動産が大半を占めていて、いったんCさんが相続して売却し、その現金からDさんの生活費などにするなど)が、それを家庭裁判所に説明して、遺産分割協議の案を認めてもらう必要があります
ここまで至るにしても、かなりの時間や労力や知識などが求められるのではないでしょうか

大手銀行や金融機関、知り合いの専門家に勧められたから大丈夫だろうと、簡単に孫を養子にしてしまうと、相続が発生する時期によっては思わぬ事態を招き、本当に「相続対策になっていたかどうか」すら疑問になることもよくあります

相続発生!!えっ、知らない相続人が…

養子縁組届を役所に提出すると、本人確認と事実確認の問い合わせが来ます
ただその確認は、あくまでも当事者に対してだけで、ほかの相続人には「養子縁組届があって相続人増えましたよ」というような連絡はありません
言い換えれば、ほかの法定相続人には知らせずに養子縁組することができるということです

時折お聞きするのが、自分の兄弟の配偶者が遺産の取り分を増やす目的で「親と知らないうちに養子縁組していた」などです

たとえば、亡くなられた方が母親で、相続人が兄と弟2人の場合で兄には知らせずに弟の嫁が養子になっていたとします
相続がいざ発生して、兄の知らないところで弟の嫁が相続権を持っているとわかります
兄から見れば、自分の取り分は1/2と思っていたのに1/3になっているとなると、兄の気持ちはどうでしょうか?
「なぜ、教えてくれなかったのか?」「どういうことなんだ?」となり、遺産分割でもめる原因になりかねません。いや、もめるのは確実ですね

まとめ

「養子縁組」をすれば親子関係になります
言わば相続の権利を発生させることとなります

養子縁組は誰が相手でも(血のつながりある方も赤の他人でも)双方の合意があれば可能です

と言っても、相続対策のためだけに養子縁組を行うのは大変危険です
その時はよくても人の心や環境は変わっていくものです

「私は財産いりませんよ」「放棄します」と言っていた方も
いざ相続が発生し資産状況がはっきりしていくと
その時の家族構成や経済環境などで大きく変わるところを見てまいりました

そういったことも十分に考えて「養子縁組」はメリット・デメリットをよく考え慎重に行うべきですね

ここまでいかがでしたでしょうか?
ご自身のご家庭で検討の余地があるけど、「どうしたらいいか具体的なはわからない」「すでに養子縁組をしているけど、このままでよいのか?」などご心配があるという方は、一度お問い合わせからご連絡いただければと思います。お問い合わせは→こちら

今回は「養子縁組」について特にお伝えしてまいりましたが、家族との問題意識のズレが後に大きな争い事に発展するのが相続問題です

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この記事を書いた人

吉政和彦

吉政和彦

大学卒業後、商社及び外資系金融機関に勤務。
2019年、会社経営者らに「会社や個人にトコトンお金を残す専門家」として、財務・税務・相続等のコンサルティングを行うa-office YOSHIMASAを開設。現在、ニーズの高まりを受け、相続コンサルティングに力を入れている。「相続の通訳」という立ち位置で、相続に強い士業など専門家と連携。相続税、遺産相続、実家の空き家対策など、相続全般に関する悩みや不安の解消をサポートしている。